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中年が夢想する近未来のシルバーサービス

中年が夢想する近未来のシルバーサービス

 2010年、わが国の高齢化率は20%超。金は、人は、制度は…。福祉や医療を考えると、たしかに不安になる。しかし、そうした「なければならない」サービスを心配するだけでは寂しい。高齢者の長くも短い日常生活を面白くする、「どちらかといえばあったらよい」サービスにも期待し、「高齢社会文化」が花開く未来を描きたいものである。
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総務省統計局のホームページより
 そうした近未来のシルバー・サービスを考えるうえで大切なのは、クライアント側の視点である。供給側の視点や現在の高齢者像にとらわれては、発想は広がらない。高齢社会の主人公となる、ほかならぬ現在の中年が思い描く夢のなかに、そのシーズを探ることも大事ではないか、と考えるのである。
 以下紹介するのは、2010年に還暦を超える当研究会のメンバーが、そのころこの世の中にどんなサービスが登場してほしいか…、そんな観点から、今後起業を期待する仕事の数々を、遊び心で想像してみたものである。
 たとえば、中分類レベルでいえば、
①高齢者に対象を限定することで、はじめて高齢者の需要が顕在化されるサービス、
②ライフスタイルのリ・デザインを支援するサービス、
③年輪とともに身の回りに増えてくるストックの整理と有効な再利用を支援するサービス、
④有り余る時間の有意義な使い方を支援するサービス、
⑤高齢者だけで暮らす力の不足を人力、機械の力、システムの力で補完するサービス、
⑥自分を誰というのか、他人とどうつきあうのかに応えるアイデンティティ関連サービス…、などである。
 未来のクライアントの視点から、現行の枠組みを離れて空想をめぐらすと、シルバー・サービスの領域はかなり広く感じられる。企業のみならず、NPOや個人、そして高齢者自らが担い手となったり、中山間地や中心商店街の資源も生かされたりするなど、さまざまな可能性がそこにはありそうに思えるのである。
 紹介する「サービス」は、まったくの絵空事であり、なかにはほとんどジョークのものもある。まずは、高齢社会も少しは面白くなる、という希望をもつためのイメージトレーニングに役立てていただければ幸いである。
                      純正野外活動研究所

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高齢者特選型サービス

 201X年のシルバー・サービス。まずは、高齢者に顧客を限定することで、高齢者のひそやかな需要を顕在化させ、満足が与えられる、そんなセグメント型サービスを紹介する。

1「シルバー・IT機器ショップ」

 高齢者にとって、新しい情報やサービスを手に入れ、遠く離れた子供たちなどと交流するツールとして、IT機器は必需品となる。電器店のパソコンコーナーとか携帯電話ショップは、高齢者にとって敷居の高いところだった。見下したような店員の視線や、チンプンカンプンの説明にうんざりして、むなしく店を出てきた人もいただろう。何も知らなくても気後れせずに相談できる、「60歳未満の方お断りの店」の登場はうれしい。まずは無料の教室があり、IT機器のイロハを知ってから品定めができる。独自のマニュアルも作成、またメンテナンスも万全で、超悪文の使用説明書に独り怒り狂うこともない。

2「健康茶房」

 昔「マンガ喫茶」、今「健康茶房」。かなり地味なシルバー・カフェである。「健康」「壮快」「ゆほびか」など、あらゆる健康雑誌が読めるだけでなく、ショウガエキス・ジュースやら黒豆汁やら銀杏茶やら、雑誌に登場する評判の数十種の飲み物や食べ物を出す。全国展開の「おもいっきりチェーン」よりも、「身土不二」をうたい文句に、カヤの実、ヤツメウナギ、ハチの子など、各地の食材を生かす地元系のチェーン店の方に勢いがある。

3「お年寄りさまランチ」

 レストランや食堂で困るのは、この際日頃の偏った栄養状態のバランスを取り戻したいと思うが、いろいろ頼むと、食が細くなっているから余してしまうこと。会席風のメニューはよいけれども、やはり多すぎるし、気軽に食べられる値段ではない。
 これは、そういうお年寄りのための一皿盛りのランチ。安上がりで、最近のファミリーレストランの人気メニューである

4「年金平民酒場」

 年金生活者限定の居酒屋。人に気遣い、人のために尽くしてきた人生から、一人ひとりが主人公である人生を楽しもうとする人のための、「気配り無用」の居酒屋。60歳以上でも「先生」と呼ばれる方、企業の現役の経営者、各種団体の役職者の方、スーツを着ている方の入店をお断りしている。
 なお、かつて仙台市の国分町に、その名も「平民」というスナックがあったと記憶している。

5「シルバー・スポーツクラブ」

 スポーツクラブもいろいろあるが、これは高齢者だけが会員になれる軽運動専門のスポーツクラブである。施設はフィットネス室や歩行用のプールなどで、とくにデラックスというわけではないが、ここでは「スポーツは競技である」と考えるスポーツマンや若い人から邪魔者扱いされたり、冷たい視線を感じたりすることがないのが、最大のウリである。
 太極拳、ダンス、体操、歩行浴、パークゴルフなど、体にやさしいシルバー・スポーツを気兼ねなく楽しめる。スタッフとしては、つい命令口調になる体育会系ではなく、心をいやすようなエンターテイナー系の人材や理学療法の知識をもつ人材が喜ばれている。

6「本格湯治ツアー」

 湯治ツアーが増えているが、これは温泉療養をしたい高齢者だけが参加できるツアー。どこも悪くない人や、いわゆる秘湯マニア、やたら騒ぐ人はお断りしている。ツアーは関節痛、胃弱、皮膚病など症状別に組んであり、本当に効いたというナマの情報だけを生かして、温泉を厳選している。えてして「効く」温泉には急な坂やでこぼこ道があったり、宿屋にも急な階段があったりするものだが、歩行困難な方にはスタッフがサポートする。
 食事は各症状に対応した特別メニュー。どちらかといえば手間のかからない粗食なので、温泉側も大歓迎。整形アドバイザーが随行する特別ツアーや、完全に横になれるベッドつきの特装バスも出てきている。

7「オシャベリツアー」

 こちらは元気すぎる高齢者向けのツアーである。旅行会社が企画する団体ツアーバスの車中はえてしてうるさい。景色もそっちのけで、しかも人にわざと聞こえるような大きい声でしゃべり続けたり、アルコールを飲んでハイになったりするグループが結構いる。
 実はうるさいなかに本質がある。日頃の満たされない思いをぶちまけたい、だれでもいいから聞いてもらいたい。ツアーバスはそのような鬱憤の発表会にもなっている。そういう人向けに、ただ走るだけでほとんどバスから降りずに帰って来る、そんなドライブ・スルー型のバスツアーも登場してきている。

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生活転換サービス

 置かれた環境や立場はどんどん変わり、何もしないと追いつけなくなる。生活スタイルや気持ちの切り換えもときには必要だ。これを支援するのが「生活転換サービス」である。

1「世慣れセミナー」

 街にどんどん出ていく気持ちにする、高齢者向けのホームページである。高齢者が街に行きづらくなるのは、歩きにくいというハードのバリアもそうだが、たとえば、交通機関の乗り方、キャッシュカードの使い方が変わったり、違いがあったり、コンビニやファーストフードショップなど新業態の店が出てきて、どうすればいいのかわからない、いわば「やり方がわからない」というノウハウ・バリアが大きくなっていることだ。このホームページは、具体的なシーンごとに「やり方」をシミュレーションで教えてくれる。さらに、週替わりで、最近街で流行のファッションや、カタカナ新語、若者言葉などのリストが画像といっしょに載っていて、役に立つ。

2「集団生活入門」

 「引きこもり症候群」は子どもだけの問題ではない。サラリーマン時代に職場と家を往復していただけの人や、「子ども命」でやってきた人ほど危ない。子どもも遠くにいれば、ときには他人のお世話にならなければいけないし、何か活動してみたいと思うなら、これまでつきあったこともない人のなかに入っていかなければならない。悠々自適とはいうが、結構シルバーの暮らしには、赤の他人との関わり、集団生活の知恵が必要なことも多い。
これは、人の輪になかなか入れずに悩んでいる人のためのホームページ。どんな心構えをもてばよいか、どんな交流イベントがあるかなどの情報を満載している。意見交換のチャツトがあり、かなり件数が上がっている。

3「シルバー・ボランティア相談」

 世のために何かしてみたいと志す人のための入口的な相談サービス。NPOなどが主体となってこの種の窓口はずいぶん増えてきた。最近では、「体が不自由になっても、寝たきりになっても役に立ちたい」という相談にも応えられるようになった。また、高齢者のボランティア、とくに男性は、かつての管理職意識や年配者意識が抜けきれず、無用な摩擦を招いたりするが、その辺の意識転換のコツも丁寧に教えるようになってきた。

4「模様替えお助け屋」

 これは、わかりやすい、モノがらみのリ・デザインサービスである。モノはどんどんたまる一方。部屋がどんどん狭くなる。室内の雰囲気を変えたい、歩きやすいように家具を動かしたいし、季節の模様替えもしたい、という気持ちはあるが、いろいろ考えていくうちにおっくうになって十数年同じまま、ということも多い。
  部屋をごみ箱にならないよう、リフレッシュするのがこのサービス。指示に従って部屋の中のものを右から左に動かす力仕事はもちろん、インテリアデザインやシック ハウス、バリアフリー、人間工学などの専門知識からアドバスをしたり、新しいプランづくりをしたりしてくれる。夏、冬物の衣類の入れ換え、虫干し、クリーニング出しなどもオプションでやってくれる。

5「エコ庭師」

 おっくうになるといえば、庭の手入れもそうである。趣を変えたいとも思うが、欧米流のガーデニングは植物を次々と大量消費するようで高齢者には疲れる。手入れが簡単でナチュラルな、いわば持続型の庭づくりをサポートするのがこのサービス。
 活躍するのは松を植え山水を配する伝統型の庭師ではなく、生態学、水・廃棄物の循環技術の知識をもつエコ庭師。枯れ葉をはじめ、庭やベランダで生まれたものは、その中で処理するのが原則。雨水も天水桶などを使って給水に生かしている。
 樹種の組み立ては、地域性に応じてオリジナルでプランニングするが、基本パッケージも用意している。クヌギがメインの「里山」、ブナがメインの「岳山」、ケヤキ・カシ・ニワトコなどを組み合わせた「杜の都」、「野鳥を呼ぶ庭」、「蝶が舞う庭」など。

6「散歩犬レンタル」

 独り暮らしの孤独な散歩はさみしい。いっしょに散歩してくれる犬でもいれば、外に出ようという気にもなると思う。だが、自宅で飼うには近所迷惑が気になるし、体力もない、マンションで犬は飼えない…という方に散歩のときだけ犬をレンタルするのがこのサービス。
 サイズ、性格も豊富に用意。毎朝コース、週一コースなどがある。アニマル・セラピーのノウハウをもつスタッフが、犬と人の相性をしっかり判定してくれる。

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身辺整理サービス

 年輪とともに身の回りにさまざまな有形無形のストックが増えてくる。これらの整理と有効な再利用をサポートする「身辺整理サービス」のなかから、情報系に絞って紹介する。

1「蔵書処理相談」

 重くて、やっかいものになってくるのが本。おそらく読み返すこともない古本が、棚や物置をふさいでいる。かといって、無造作に捨てられないという人のためのサービスである。司書資格のあるスタッフが蔵書を出張鑑定。
 ごみに出すもの、古本屋向けのもの、図書館で欲しがっているもの、さらには貴重なお宝ものに振り分け、処分を代行してくれる。捨てるには心に引っかかる本については、「お焚きあげ」サービスのオプションも。

2「写真整理代行」

 整理もせず、袋や引き出しに突っ込んである写真は結構多い。記憶も薄れ、何年ころのものかさえ分からなくなったものもある。フィルムはなおさらだ。こうした写真の整理のお手伝いをしてくれるのがこのサービス。
 心理学の知識で記憶をたどるヒントを与えたり、わずかな手がかりから撮影場所や年月を推定したりしてくれる。整理は従来のアルバム方式のほか、デジタル化してDVDに入力する方式もある。

3「電子物置屋」

 昔子どもが遊んだおもちゃ、若いころ着たドレスやスーツ、なけなしのお金で買った置物。思い出がしみ込んだ品物も、やがてタンスや押し入れの長期占有物になる。捨てたいが、捨てられない、そんな矛盾した気持ちに応えるのがこのサービス。
 思い出の品を「電子物置」というソフトで3次元立体映像として記録してくれる。現物はもうないが、思い出とともに、パソコンの中からいつでも取り出せる。

4「電子過去帳」

 自分史は、本というスタイルから、個人のヒストリーを映像、音声を含めて1枚のディスクに編集するスタイルに進化。その延長線上で出てきたのが、身辺整理サービスの究極というべきこのサービスだ。
 自分史データディスクに、やがて捨てられる遺品などの映像も組み込んで再編集し、お寺で永久保管するもの。家族解体時代に、せめて生きた証をどこかに残したいというニーズを捉えた葬儀屋のアイデアであるが、個人(故人)情報が集積し、やがて歴史的資料となる、との学者の意見も。

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時間充足サービス

 やはり高齢者はヒマである。この時間を有意義に使いたいと思う。「時間充足サービス」は、一味違う時間を提供するサービス。

1「古民家昼寝処」

 ここでは、農家のサービス業化が少しずつ進み、高齢者の人気日帰りリゾート・エリアになりつつある田園地域のものを紹介する。
 家族が減ってほとんど使わなくなった農家の大広間を開放し、昼寝をさせるサービス。ただそれだけだが、意外に人気があり、外国人シルバー客にも受けている。
 高い天井を見上げながらまどろみ、風や虫の音、かすかに残る昔の囲炉裏の匂いを楽しむ。枕は、ソバ殻、モミ殻、高血圧の人によいというクルミの殻入りなどがあって、選べる。
 夏の季節には蚊帳の使用もオプション。いわば、ひそやかな音、光、風の流れ、においを提供する環境サービス業であり、ハイになる人やタバコを吸う人はお断りしている。たいした設備投資もいらない中山間地の新しいビジネスである。

2「縁側茶屋」

 縁側だけの茶屋。定員はそこに横向きに腰掛けられる人数で、せいぜい2グループ、6名程度。出てくるのは、お茶、漬物、まんじゅうだけ。調理の手間もいらず、店の人も縁側で客の話し相手ができる。
 石うすをその場で回し、ひき立てのソバ粉やきな粉を売ったり、庭先の野菜を抜いて売ったりするところもある。
 猫がそばで日なたぼっこをしていたり、ニワトリや犬が庭を走り回っていたり、青大将が足元からはい出てくることもあるので、動物が苦手な方にはすすめられないかも。

3「むかし屋」

 田舎にたくさんあった「よろず屋」さんが居直って先祖返りした店。量り売りの酒・みそ・しょうゆ、カツオや鯨肉の極辛の塩びき、食紅などの食品、ハエ取りリボン、金網製のハエたたき、粉歯磨き、竹ざる、ほうれんマッチ、アルミの洗濯ばさみ、黒チリ紙、ワラ半紙などの雑貨を商う。モンペ、割ぽう着、黒い腕ぬき、どんぶく、福助足袋なども時々入荷。
 今や、中山間地での日帰りリゾートを楽しむ高齢者の人気スポット。失禁対策や風邪の予防に下着も扱っていて気がきく。浪速千枝子のオロナイン、水原弘のアースの看板などが店の目印だ。

4「農業塾」

 まったく農業をしたことのない人のための実践塾である。経営者と先生は農家のおじいさん、おばあさん。従来の市民農園との違いは、農地を貸しっ放しにするのではなく、クラブハウス(納屋)や現場(田畑)での授業があること。鍬の持ち方、土つくり、作付け計画の仕方から始まり、1年間にわたって「農」の奥義を教えてくれる。
 農事暦による祭事、もちつき、みそ作り、そばうちなどのイベントがからむ。雑草取りは基本的な作業だが、無理な人のために一部代行サービスも可能。対象は初心者のみで、農作物をたくさん作ろうとするだけの欲張りな方はお断りしている。

5「縁故米仲人」

 農家の方と付き合ってみたいという都市民と、米を直販したいという中山間地の農家をつなぐ仲人サービス。
 欲得の仲介ではなく、両者の末永いよき付き合い、まさに「縁故」をつくるのが趣旨。客筋・農家双方の人柄をみて選別させていただいている。

6「山仕事塾」

 肉体作業自体を楽しんでもらうサービスだ。同じ汗でも、ゴルフの汗とは何かをやり遂げた満足感の重さがちがう。危険防止の講義、平場での機材操作の練習の後で入山。
 鎌を振るって下刈りをし、苗を一本づつ植林し、木を切り出し、ナタで枝を下ろし運び出す。つらくて、自虐的な雰囲気さえあるが、不思議に参加者が増えている。山が好きというより、自分が役に立っているという実感、多少のスリル、大きな声を掛け合うという日常にはない体験がいい。

7「懐古娯楽映画館」

 田舎町に残存する古い映画館を改修した昭和20~40年代の映画専門館。小津、黒沢のような重い作品でなく「二等兵物語」「紅孔雀」「社長シリーズ」をはじめ娯楽大衆作品だけを上映。
 嵐寛があばれ、千恵蔵がぶつぶつ呟き、ひばりが歌い、トモコが泣かせる。ドライアイスで投影光にスモークがかかり、昔の館内の雰囲気が出ている。ごく一部だが、映画館の周辺が高度成長期前の街並みになっていて、暗やみから現実の世界に出たときのタイムスリップした感触がよみがえる。

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お助け力サービス

 衰える気力、体力、さらには情報収集力…。高齢者だけで暮らす力の不足を、人力、機械力、システムの力で補完するのが「お助け力サービス」。シルバー・サービスとしてはメジャーな分野だが、ここではさまざまなバリエーションを紹介する。

1「干し柿・梅干し代行」

 子どもがいたころはみんなで「干し柿」をつくった庭の渋柿も、今では鳥のエサになるだけ。食べたいが、自分でやるのは危ないし、めんどう。そんな方のための代行サービスで、以前からボランティアとしてはあったが、最近ビジネスに進化。
 柿をもぐだけ、皮をむいて軒先に吊るすまで、完成した干し柿にして届けてくれるまで、の三通りがある。同じく「梅干し代行」もあり、加工途中の「土用干しの梅」を味わいたい方には、その分をもってきてくれる。いずれも手数料は現物分け前方式。

2「店屋物出前代行」

 食事宅配サービスは「高齢者孤居時代」の成長産業。さまざまな企業、NPOが参入しているが、これは昔からある商店街の食堂をネットして、注文をまとめ、出前を代行するだけのシステム。
 1人前でも出前してくれるところがミソである。食堂側の設備投資はほとんどゼロ。日替わり弁当方式と違って、利用者にとっては和洋中華からいろいろ選べるし、何より出来立てなのがうれしい。食堂側も競争原理が働き、メニューや栄養面などの工夫を進めている。
 仕事柄薄利のため、NPOが行政などの支援を受けて行っている事業形態が多い。

3「注文の多い下宿屋」

 下宿人の方が宿主の世話をする、新タイプの下宿屋システム。福祉系の大学や専門学校と連携した独り暮らしの高齢者向けサービスである。学校側が高齢者独居家庭を実習先として契約し、学生を下宿人としてあっせん。
 部屋代をタダにする代わり、下宿人に食事や掃除、買い物などの世話、すなわち高齢者在宅生活サービスをしてもらう。通称「注文の多い下宿屋」。学生も住んでいるだけで実習の単位が取得でき、一石三鳥のシステムになる。

4「愛犬散歩代行」

 愛犬を毎日散歩させたいと思うが、日によっては体がいうことをきかず、切ない思いをすることがある。そんなときに役立つのがこの「愛犬散歩代行」。
 料金は犬の力の強さや性格の評価でちがう。雪や雨などの悪天候時は割増料金。飼い主が短期の入院や旅行等のときに預かる「宅犬」サービスも用意している。

5「シルバー特装車改造」

 年はとっても車を使って自分の意思で動きたいという人は多い。しかし運動神経や筋力、注意力は衰えている。
 高齢者ユーザー一人ひとりの都合に応じた車づくりをしてくれるのが、このサービス。ミラーの増設、バックブザー、障害物や人の接近を感知するセンサーや緊急事態の通報装置の取り付け、足腰の調子に合わせてペダルの踏み込やドアの開閉を軽くする改良などをしてくれる。

6「高齢者ボディーガード」

 残念ながら少年非行は減るどころか、ついに真っ昼間に通行人を襲うストリートギャングが出没する嘆かわしい状況も出現。
 危険な地区に行かなければならないとき、深夜や早朝に外出しなければならないときなど、「おじん狩り」「おばん狩り」から守るボディーガードを派遣する腕力提供サービス。
 こうしたセーフティーガード関係の高齢者サービスが繁盛するのは、残念ながらうれしいことではない。

7「コミュニティーHP」

 学区がエリアの狭域型のホームページ。ごみ収集、健康診断、学校・町内会・地域市民団体のイベントやお知らせ、電気や道路の工事予定、停留所ごとのバスダイヤ、商店のセールなど、地域バージョンの暮らし情報のほか、ウグイスの初音といった身近な歳時記情報を満載。訃報等も載っている。
 コミュニティー再生のツールとして役立っているが、高齢者にとっても、<出無精⇔不案内>の悪循環から抜け出すのに便利なサービスになっている。
 また、これにはさまざまな情報がリンク。高齢者を狙う犯罪や悪徳商法の手口を速報する「シルバー注意報」などが見逃せない。

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ホビー支援サービス

 ホビー支援サービスはささやかな楽しみごとを、より楽しくさせてくれるサービスである。まずは園芸関係から紹介する。

1「超親切園芸店」

 年金が削られ、家庭菜園が高齢者の生活防衛で大流行。園芸店もかつては花が主流だったが、野菜に力を入れ、きめ細かな栽培ノウハウを提供する店が出てきた。とくに、野菜の種蒔き時を客にアドバイスできるようになったのは大きな進歩。蒔き時はその年の気象条件でも、また少し大きな町なら場所によっても違う。そうした微細な情報をモニターの農家や会員から集めて提供。また、会員にはメールによる個別相談にも応じている。
 市民農園事業にも参入。土地を貸したい農家、農業をしてみたい市民をつないで市民農園を立ち上げ、さらには農家(量産志向の発想で農薬や化学肥料の使用を勧めがち)に代わって、インストラクターによる現場やメールでの技術指導もしてくれる。

2「家庭菜園ブランド野菜販売」

 庭やベランダなどの家庭菜園は、やりようによっては、超高級野菜の「産地」になる。完全無農薬で、虫を毎日一個一個つまんで除去するくらい手間を掛けられる。有機肥料も台所からふんだんに供給できる。新種・珍種に挑戦しても、金銭的なリスクは少なく、全滅してもせいぜい種代は一袋300~500円だ。
 このサービスはこれに着目。○○さん宅のキウリ、○○さん宅のナスとか、ブランドをつけて販売する。実は、作っているほうも、自家用だけでは持て余すことも多い。自分で食べるだけでは物足りなくなってきて、何かの役にたちたいという思いもある。
 こうした、いわば家庭菜園中級以上の方のニーズにもマッチして、「家庭菜園高級野菜」が流通し始めている。

3「家庭菜園契約レストラン」

 「家庭菜園産高級野菜」は、レストランも注目。店で使う野菜を契約栽培してもらうところも出てきた。何軒かの家庭菜園がグループを結成。作付け計画に基づいて多品種少量型の供給をするスタイルである。
 同じまちの中だから、レストランとしても近場で新鮮・安全な食材を手に入れられるのが好都合。とくに、「摘みたてのハーブ」、日持ちの難しい「ズッキーニの花」のような食材が使えるし、「アーティチョーク」のような珍種の食材を頼んで作ってもらうこともできる。
 なお、決済は現物主義。月に一度グループ招待のフルコース料理が受けている。

4「作品展示サービス」

 自分がつくった絵や手芸などの作品を、他人に見せたいと思う高齢者は少なくない。これは、年一回、まちや地区の文化祭で一把一からげに展示されるのでは満足できない方のためのサービス。
 飲食店、小売店などにリザーブしている展示スペースを、2週間単位で貸してくれる。作品のレベルに応じてランクがあり、○○レストランの窓側の壁はAクラス、最低は○○居酒屋のトイレの壁、という感じである。
 一次審査は、メール送信の映像で行われ、パスしたら現物による最終審査を受ける。当然落とされることもある。そんな時でも、恨まず精進できる人だけに薦めたい。

5「超初級手習い講座」

 将棋をしたことがない。生け花の作法を知らない。国の名前を聞いてもどこにあるのかあまり分からない。歴史も昔習ったはずだが、よく分からない。TVの政治や経済のニュースが理解できない・・・。自分だけか、と思いがちだが、世間にはそんな人がたくさんいる。
 これは、そのような高齢者の長年のコンプレックスを解消する超初級カルチャー・プログラム。恥ずかしい思いをせず、楽しく学べる工夫がされている。

6「超専門個人授業」

 昔極め尽くせなかったことが気がかりで、研究に再挑戦したいという人のためのサポート。最近の研究動向や文献を教えてくれたり、一知半解のままにしていた難解な大作の購読につきあってくれる。先生は、退官した教授が多いが、若いオーバートクターも人気だ。
 一番の楽しみは先生と一緒に行く海外視察旅行。先生が現役時代に養った知識や人との縁で、充実したインナートリップができる。

7「田舎屋」

 豆腐、油揚げ、餅、まんじゅう…。田舎町でたまたま口にした、素朴、地域限定、かつできたての味を、都会でなんとか味わいたいというグルメのための店。
 日持ちもせいぜい1日。わざわざ買いに行くわけにもいかない。欲しいのは一個、二個で、宅急便も使えない。
 この店が採っているのは、前日こうしたわがままな注文を受け付け、その田舎町から通って来るサラリーマンや学生に買って来てもらうというシンプルなシステム。ハエ取りリボン、柴箒、モンペ、地下足袋など田舎の雑貨店にあるグッズの取り寄せもできる。

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自分探し支援サービス

 退職と共に、今まで数十年間言い続けてきた「○○のだれだれでございます」が効かなくなる。自分をだれというのか、どう他人とつきあうのか、そんなアイデンティティーの悩みに応えるのが「自分探し支援サービス」である。

1「肩書考案屋」

 退職後肩書を「無職」と書くことは抵抗感がある。「無職」だと、たとえば立派な投書でもそれだけで軽視される気がする。「職」はなくとも、別な名乗り方があってもよい。
 これは、ウソにならない範囲で、どんな肩書が使えるかを工夫してくれるサービス。
 結構なにかにと考えられるものだが、なかにはまったく「無」の人もいる。その場合は、たとえば何かの勉強会や市民活動団体などへの入会を紹介して、まずは実体づくりから始めることになる。

2「愚痴聞き屋」

 リストラ、親子のギャップ、年金の不安…。人生後半に荒波がきた団塊の高齢者の愚痴をとことん聞いてくれるサービスである。
 一時間が基本だが、特別料金の無制限「朝までサービス」もある。ただ、あくまで聞いてあげるだけで、アドバイスは一切できないことにしている。

3「祖父母業」教室

 団塊の世代も小中学生の孫と付き合わなければならない時代になる。親子関係も十分だったかといえば心もとないのに、まして新世紀人の孫とギャップは大きく、悩んでいる方も多い。
 かつて『親業』や『七つの習慣』など、父母のためのアメリカ輸入のハウツー本がはやったことがあったが、祖父母には父母とはまた違う心掛けや知識が必要だ。
 心理学、社会学、児童福祉学、さらには犯罪学にも詳しく、教育現場の経験もあるスタッフが、孫との人間関係の悩みを解消してくれる。

4「先祖探し」

 年を重ねると自分がどこから来たのか知りたくなる。これは、歴史学の専門家をスタッフに、一人ひとりのルーツ探しを支援するサービス。
 普通の家には家系図などまずない。戸籍、家に残るあらゆる資料、地域の歴史、寺の過去帳、墓碑、聞き取り調査などから総合的に攻めていく。
 各地の郷土史家のネットワークも生かす。最近では、DNAによる鑑定方法の応用も研究されている。

5「冷や水研究会」

 世間への苦言、恨みつらみ、悪口を出し合い、ぶつけ合う激しい研究会である。月刊誌『冷や水』を発行。
 新聞の投書欄などと違って、投稿はどんなものでも全て掲載してくれるので、まずは満足する。ホームページもあるが、直ちに反論が来たりするので、言いっぱなしの快感を期待する頑固な高齢者には不評である。
 高齢者の不平不満は、社会的な要因のみならず、時には個人的な事情も絡んだ、ごった煮のようなところがある。政策提言分科会では、その辺を冷静に考えられる会員が、社会学の研究者や学生と一緒に不満を構造分析。行政や企業、政治家などへの提言にまで高める検討作業をする。

6「おせっかい業」

 退職後の悠々自適の生活は、人から指図されることもなくたしかに気が楽だが、自覚がないと無為に流れがち。「退職したらこうする」という公約もたちまち反故になってしまう。
 これは、やはり他人から言ってもらわないとどうもダメ、という指示待ちタイプの人向けのサービス。年の初めに1年分の計画を提出すると、定期的に「やってますか」とチェックが入り、アドバイスしてくれる。
 かくしゃくとした超高齢者をいわば「人生の上司」につけ、叱咤激励してもらうオプションもある。

7「ボランティア人足寄場」

 ボランティアをしたいが、組織に縛られて動くようなのはもういい、という人のために単発的なボランティア活動だけを紹介するサービス。
 高齢者ボランティアのフリーター版である。商店街の空き店舗につくったシルーバーサロンがいわば「人足寄場」。そこに行くと、ボランティアセンターから「家の前の雪かきをしてほしい」「代わりに子供の出迎えに行ってほし」といった依頼が来る。即日対応できるのが売りで、頼む方からも喜ばれている。文句を言わず黙々と動く人が歓迎される。

8「退職後結婚相談所」

 シングルで通してきたが、退職したら結婚でもしようか、という人が増える。そんな超晩婚のための相談所である。
 その年になれば、男性ならハゲ・デブ、女性ならシミ・小じわは当たり前で気が楽。ポイントは気心が通じ合うかどうかである。
 出会いはやはり、パーティ方式。お互い初婚だけに、明るい雰囲気がよい。

9「なりたかった屋」

 不本意な道に進んでしまったという、あきらめきれない思いに応えるサービス。人生の岐路で違う判断をしたら、その後どう変わったか、「もう一つの人生」を膨大なデータからシミュレートしてくれる。
 なお、音楽の道を捨てサラリーマン人生で終わった人がフルオーケストラをバックに歌う、ケガのために野球をあきらめたかつての高校球児が甲子園のマウンドで投げる…、そんなバーチャル映像をつくることもできる。

10「走馬灯屋」

 コンピューター画像体験サービス。昭和30~40年代の街並みや田園風景の写真を、コンピューターグラフィックで3次元処理してあり、画像の中に入っていけるような体験ができる。
 全国市町村のメーンのスポットを揃えている。ダイハツミゼットがほこりを立てて通り過ぎ、街角で懐かしい父母のような人とすれ違う。マメトラ、ヤンマーが田を耕し、振り返れば、夕暮れの空を複葉練習機が飛んでいく。そして、フォークソングのざわめきが聞こえる40年代の新宿…。
 なつかしい子どものころの故郷、青春時代を過ごした雑踏のなかに再びあなたは立ち戻る。家庭や病院へのホスピス支援出張サービスも喜ばれている。

あとがき

 医療や福祉の充実が当然基礎になければならないが、民間ベースの生活サービスがこれから花開くはずである。
 それは、高齢者のハンディ・サポートに始まり、やがて新しい高齢者社会のカルチャーをつくりだしていく重要な役割を演ずるはずである。
「 干し柿代行」(宮城県松山町)、「店屋物出前代行」(高浜市)・・・。すでに、中年の夢とばかり思っていたようなサービスも、実際に世の中に登場してきたようだ。
 シルバー・サービス起業時代がいよいよ始まりつつある。

純正野外活動研究所プロフィール

 仙台の公務員やデザイナーなどからなるグループ。財布と環境にやさしいシニアライフの研究をしている。

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